僕のonly princess


「……薫って女の気持ちをまったくわからないバカだったのね」


「は?」


俺の話を聞いた後、佐知は大きな溜息と一緒に呆れた声で一言、そう言った。
俺はそんな佐知の言い分に、カチンときて低い声で訊き返して佐知を軽く睨んだけれど、佐知はまったく気にすることもなく、もう一度「バカね」と言った。


「バカって、……どうして?」


佐知の言葉にはカチンと来たけど、『女の気持ちがわからない』と言われて俺は佐知にその答えを小さな声で求めた。


この場合、女っていうのは結花ちゃんのことだろう。
俺が結花ちゃんの気持ちをわかっていないと佐知が言うからには、本当にそうなんだろうけど。
俺には自分が取った選択肢以外に取る術がなかったと思っている。
だから佐知の言いたいことがわからない。


他に俺ができたことがあった?
こんなどうしようもない俺が結花ちゃんにできることが、彼女と別れること以外にあったのか……?


「どうして別れる前に自分の手で彼女を守ってあげようとしなかったの?」


「……俺の手で結花ちゃんを守る?」


佐知の言葉に俺は固まった。


そんなこと俺にできた?
こんな穢れた手で結花ちゃんを守るなんて、そんな資格が俺にあるのか?


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