僕のonly princess
「いいよ。気にしないで。じゃあ、ゆいかちゃんのケイ番とアドレス教えて。明日もし予定がなかったら放課後デートでもしようか?」
「ほ、放課後デート……」
赤い顔でそう呟いたゆいかちゃんは、コクコクと首を縦に振る。
きっとそういうのに慣れていないんだろうな。
俺の軽い誘いの言葉に大げさに反応している彼女の顔を見て、俺は自然にクスッと笑っていた。
「…よし、交換完了。じゃあ、明日の時間とか場所とかまた夜にでもメールするね」
赤外線でケイ番とアドレスを交換して、ゆいかちゃんに携帯を返しながらそう言う俺にゆいかちゃんはやっぱり無言でコクコクと頷くだけで。
すでに容量オーバーになっていそうな彼女に笑って見せると、ゆいかちゃんも少しだけぎこちなく笑い返してくれた。
初めて見るゆいかちゃんの笑顔。
ぎこちなくて、硬い笑顔なのに、すごく可愛く思えて一瞬、ドキッとした。
……え、何?
「…じゃあ、また明日ね」
「はいっ、あの、ありがとうございました。また…明日」
一瞬だけ跳ねた鼓動の意味がわからなくて、内心動揺しながらも笑顔で言った俺に、ゆいかちゃんは赤い頬で照れたように表情を緩ませた。
最後の『また…明日』は小さくて、人ごみの中に消えてしまいそうな声だったけど、確かに俺には届いた。
何だろう、ゆいかちゃんの小さなその明日を約束する言葉が、やけに温かく胸に広がった。