僕のonly princess


清稜に来たのはこれで二度目だ。
初めて来たのは結花ちゃんに会いに。
あの時はただ結花ちゃんの笑顔が見たくて、何も考えずにここに来ていた。
でも今日は、あの時とはまるっきり違う気持ちで清稜の校門の前に立っている。


理穂子ちゃんはかなりの自信家でプライドも高い。
今はまだ俺への気持ちも冷めていないようだし、きっと素直に別れを聞き入れてはくれないだろう。


自分から別れを告げるのもこれで二度目。
慣れないことだけど、面倒とか言っていられない。


俺は今度こそ結花ちゃんとちゃんと向き合うって決めたんだ。
そのために、たとえすぐに納得してもらえなくても理穂子ちゃんとはちゃんと別れなければいけない。


俺は気合を入れ直す気持ちで、心の中で『よし』と呟いてちょうど校門から出てきた女の子に声を掛けた。


「あの、ちょっといいかな?2年の中村理穂子ちゃんって知ってる?」


「え……はい、知ってますけど」


急に俺に話しかけられた女の子は顔を赤くして、数回瞬きをした。
知ってるって答えにホッとして、俺は目の前の女の子に更に訊ねた。


「今、どこにいるかわかる?」


「えぇ…、さっき中庭にいるのを見ましたけど」


「ホント?よかった。中庭ってどうやって行ったらいいのかな?」


偶然声を掛けた子が理穂子ちゃんの居場所を知ってくれていて助かった。
中庭の場所もちゃんと教えてくれた女の子に、俺は感謝の気持ちで笑顔を向けてお礼を告げると、教えてもらった中庭に向かった。


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