僕のonly princess
女子高に他校の男子生徒が入るなんて、たぶん……いや、確実にもってのほかだろう。
なので、俺は先生に見つからないように早足で目的地の中庭を目指した。
さっきの女の子が教えてくれた目印の銀杏の木が見えてきた。
あの木の奥が中庭のはず。
俺は先生に見つからないように注意を払いながら、更に早足で銀杏の木の下までやってきた。
銀杏の木まで来た俺は、中庭らしい場所から聞こえる数人の声に思わず立ち止まった。
聞こえてくる声の中に、理穂子ちゃんの声が聞こえてきて、彼女がまだここにいたことにホッとした。
他の場所に移動されてたら探しようがないから、まだここにいてくれて助かった。
「……っと、聞いてるの?…………あなたって本当に……するわね」
俺の耳に届いた理穂子ちゃんの声は少し苛立っていて、とても嫌味っぽく呆れたような口調だった。
途中途中、よく聞き取れなくて俺は銀杏の木に隠れるようにして、彼女達がいるだろう場所との距離を少しだけ縮めた。
「薫はね、今は私の彼氏なの。だから金輪際、彼の前をうろちょろしないで」
え、俺のこと?
いきなり出てきた自分の名前に驚く。
理穂子ちゃんの棘のある言い方に俺の中に嫌悪感が湧いてくる。
すっかり俺を自分のモノだと思って、こんな風に自信満々に言い放つ彼女はいったい誰に向かって言っているんだろう。
「そんな……うろちょろだなんて……そんなつもりは」
え………結花ちゃん?
理穂子ちゃの棘のある言葉に遠慮気味な声で答えたのは、紛れもなく結花ちゃんだった。