僕のonly princess


「それから、君とはもう付き合えないから。俺とのことも今ここで終わりにしてもらう」


冷たく低い声で付け加えた俺に理穂子ちゃんは顔を上げて、何か言いたげな顔をしたけれど、俺はそれを無言で制した。


「元々今日、ここに来たのは君と別れるためだったから。君への気持ちも微塵もないのに適当に付き合った俺にも非がある。だからって君達が結花ちゃんにしたことを許せはしない。今後一切、結花ちゃんにも俺にも近づくな。それを破ったら絶対に容赦はしないから」


俺は言い捨てるようにそう言うと、ずっと黙ったまま俯いていた結花ちゃんを抱えるようにして、その場を立ち去った。


結花ちゃんはずっと俺達のやり取りを聞きながら、小さく震えていた。


今までどれだけつらかっただろうと、今更ながら思って俺は心が痛くなった。
あんな理不尽な言葉を投げつけられて、挙句の果てに暴行までされそうになって。
俺の腕の中で震える結花ちゃんが痛々しくて、震えるその肩をギュッと強く抱き締めた。


どうしてもっと早くこうやって助けてあげられなかったのかと、自分の愚かさと無力さに後悔する。


俺と別れれば、嫌がらせもなくなって、結花ちゃんが傷つくことはなくなると思っていたのに、そうじゃなかった。
別れても嫌がさせは続いていて、もっと悪い方向にヒートアップしていたなんて。


俺は結花ちゃんのためだと思っていた方法は間違っていたと痛感して、俺は結花ちゃんを抱き締めながら、唇を噛みしめた。


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