僕のonly princess


俺は自分の恋愛について、吾郎や忠に詳しく話したことはない。
話すほどの関係だと思える女の子じゃなかったっていうのが理由だ。
結花ちゃんとのことも、その流れのまま特別吾郎達に話したことはない。


もちろん、やっと気付いた自分の気持ちも。
今の状況も、何も話したことがない。


なのに、吾郎は全部お見通しだと言わんばかりに、はっきりと確信を持っているみたいに見える。


驚く俺に吾郎はいつもの太陽みたいな笑顔を浮かべて、また俺の驚くことを口にした。


「あの子と一緒にいた頃の薫はすごく幸せそうだったよ。俺達とバカなことをやってる時でさえ、それまでと比べ物にならないくらい幸せオーラが出てた」


「……そう、なの?」


自分のことなのに、まったくわからない。
本当に吾郎の言うように、結花ちゃんと付き合っていた頃の俺はそんなにあからさまに今までの俺とは違って見えていたんだろうか?


「充実してるっていうか、心が満たされてるんだろうなって思ってた。やっと薫がそう思える女の子と出逢えてよかったって思ってたんだけど……最近はまた前の薫に戻ったみたいだ」


「……そっか。俺ってそんなにわかりやすかったんだね」


吾郎の言葉に苦笑いが浮かんだ。
吾郎達にわかるほど、結花ちゃんといた頃の俺は満たされていたのか。


気付いていないのは自分だけだったなんて……


ホント、どうしてこんなにも鈍いんだろう。
結構、鋭い方だと思っていたんだけどな。


< 123 / 238 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop