僕のonly princess
「……薫くん、ありがとう」
「え?」
ずっと黙って聞いていた結花は、小さくぽつりと柔らかな声でそう言った。
驚いて顔を上げると、結花はふわりと優しく俺に微笑みかけてくれていた。
「ありがとうなんて……それは俺の方だ」
「ううん。言い難いことなのに、私にちゃんと聞かせてくれてありがとう。私はただ薫くんのことが好きなだけ。薫くんが言う闇から抜け出せたのも薫くんが強いからだよ。だけどそれを私のおかげだって言ってくれる薫くんの想いが嬉しいの。本当に、ありがとう」
微笑みながら俺を見つめて、そう言ってくれる結花に俺は胸が詰まって熱いものが込み上げてきた。
普段はふわりと優しくて、小動物みたいに可愛い結花だけど。
その芯はとても強くて、そしてとても温かな女の子なんだと改めて実感した。
そんな結花が俺みたいな男を好きでいてくれることが、奇跡とさえ思う。
「結花……君のことが好き過ぎてどうしよう」
「か、薫くん!?」
結花の優しい笑顔を見つめて、俺は弱ったように眉を下げて呟いた。
そんな俺に結花はさっきまでの表情をガラッと変えて、真っ赤になりながら慌て出す。
そのギャップにまた俺の心は結花に持っていかれる。
「結花、可愛い。もう絶対離さないからずっと俺のそばにいて?」
結花の手をキュッと握って、その大きな瞳を見つめながら俺がそう言うと、結花はピタリと動きを止めた。
そして真っ赤に染まった顔でふわりと笑って、コクコクと頷いた。