僕のonly princess

ヒントはそこにあったのに




カフェを出て、しっかりと手を繋いで二人で駅へ向かう。


またこうして俺の隣に結花がいてくれることが、堪らなく嬉しくて俺は結花の小さくて柔らかな手をギュッと握り締めた。
結花も照れながら俺ににっこりと笑いかけてくれて、繋いだ手を握り返してくれる。


そんな些細なことがくすぐったくて、とても甘くて幸せで。


こんな気持ちを感じられる時が来るなんて、少し前の俺には想像もできていなかった。


俺はこの初めて感じる甘い幸せに浮かれすぎていたんだ。


だから、そこにあった重要なヒントを見逃してしまった。



「家まで送って行くよ」


駅の改札を抜けて、当然のようにそう言った俺に結花は首を縦には振ってくれなかった。
今までも送って行くと言った俺に結花はいつも遠慮していた。
俺もそれを大して気にはしていなかったけれど、俺にとって心から大切な彼女になった結花をちゃんと今は家まで送り届けたかった。


「大丈夫だよ。お家で可愛い姪っ子ちゃんが待ってるから早く帰ってあげて?」


「理子ちゃんは確かに可愛いけど、結花の方が俺にはずっと大切なんだよ?」


どんなに可愛い姪っ子でも、結花よりも優先すべき存在ではない。
俺は誰よりも結花を優先させたいのに。


「……うん、ありがと。すごく嬉しい」


俺の言葉に結花は嬉しそうに微笑んだけれど、その笑顔がどこか儚げに見えるのはどうしてだろう?


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