僕のonly princess
母は細い体でいつも私のために遅くまで働いてくれていた。
他の友達がみんな迎えに来てもらっても、保育園に最後まで私だけが残っていた。
保育園の延長保育の時間ギリギリに迎えに来てくれる母はとても疲れた顔をしていて、それでも私を迎えてくれる笑顔は優しくて。
ママがいてくれれば、それだけでいい。
幼い私はそう思っていた。
なのに、私はそんな母を自分のせいで失ってしまった。
あれは私が今よりもずっと幼い小学5年生の時。
あの日はいつも私のために忙しく働いている母が、久しぶりに休みを取ってくれて二人で買い物に出かけていた。
土曜日も仕事をしていた母は、日曜日は溜まっている家事をしたり、疲れている体を休めるために家にいることが多かった。
でもあの日はもうすぐ私の誕生日だからと言って、母がプレゼントを買いに行こうと言ってくれたんだ。
それが嬉しくて。
母とのお出かけが本当に嬉しくて、私ははしゃぎ過ぎていた。
『結花、そんなに走ったら危ないわ。ちゃんと前を見なさい』
そう窘める母も私のはしゃぐ姿を見て嬉しそうに笑っていた。
母の笑顔がまた私を嬉しくさせて、私は母の言うことも聞かずに母を急かしながらデパートまでの道を急いでいた。