僕のonly princess
母が亡くなって、私は一人ぼっちになった。
私が祖父母と呼べる人達とも、他の親戚らしい人達とも一切、係わりを持たずに母と私は生活していた。
頼れる人が誰もいなくなってしまった私は、母の職場の人達が開いてくれたお葬式を終えると、養護施設と呼ばれるところへ連れてこられた。
外見は保育園のような建物で、私を迎えてくれたのは優しい笑顔の母よりもずっと年上の女の人。
園長先生と呼ばれるその人は、戸惑う私にとても優しく微笑んで、ゆっくりと頭を撫でてくれた。
『今日からここが結花ちゃんのお家よ。私やここにいるみんなが結花ちゃんの家族。大勢いるから楽しいわ』
私は複雑な気持ちでその園長先生の言葉に頷いた。
ここが私のお家。ここにいる人達が私の家族。
その現実がよく理解できていなかったんだと思う。
だけど、実際に暮らし始めてみて、私はすぐにこの場所に慣れることができた。
それは園長先生や他の先生達が優しかったのと、ここに暮らす他の子供達がみんな私を家族として受けいれてくれたから。
この施設には私のように親のいない子供達や親はいてもそれぞれの事情で一緒に暮らせない子供達が十数人いた。
年齢は一番下の子は保育園に上がったばかりの子から、高校生のお姉さんまで色々だった。
だけどみんな明るくて、私に優しくしてくれて。
こんなに大勢で毎日を過ごすことが初めての私には、楽しい毎日だった。
それぞれ色んな事情を抱えているけれど、ここではみんなそれを見せない。
“楽しく、明るく賑やかに”それがこの施設のもっとうだと先生達が教えてくれた。
だから私もみんなと一緒に毎日を楽しく過ごした。
そうすることが、その時の私にできるすべてだと思っていたから。