僕のonly princess
心の中では母を死に追いやったのは自分のせいだと思っていても。
私があの時、母の注意を聞いてもっと慎重に横断歩道を渡っていれば、信号無視して飛び込んできた車に気付けたはずで、母が私を庇って轢かれることはなかったと後悔ばかりしていたとしても。
それを表に出して悲しんでいてはいけないのだと、自分に言い聞かせていた。
私はそれから6年、この“ふたば園”でお世話になっている。
周りの“家族”は入れ替わりがあるものの、十数人いる彼らはみんな先生達も含めて、私の大切な家族だ。
保育園や小学校へ通う小さい子供達は可愛い。
いつの間にかふたば園で一番の年長になっていた私は、彼らのお世話をしたり、食事や掃除など先生達の手伝いをする立場になっていた。
毎日賑やかで騒がしい“我が家”は、住み心地がいいとはお世辞にも言えないけれど、それでも大好きな場所だった。
そして、このふたば園で私と同じ年長の“家族”もう一人いる。
それが……
「……はよ」
「おはよう、勇也」
倉石勇也……彼は私がここで一番長く一緒にいる幼馴染で家族だ。
「今日のゴミはこれだけか?」
「うん。お願い」
「あぁ」
台所で朝食のお味噌汁を作っている私がゴミ袋を指差す勇也に頷いて答えると、勇也はそれを持って裏口から出て行った。
朝食の準備は私、ゴミ出しは勇也。
それが私達の今朝の当番だった。