僕のonly princess


その後、薫くんは私の手を引いて水族館の端から端まで一緒に見て回ってくれた。
まるで私達も海の中にいるような錯覚をするほど大きな水槽の中を泳ぐたくさんの魚達。
数ある小さな水槽には私の知らない魚達もいっぱいいた。


一つ一つ見ながら二人で交わす会話が楽しくて。
薫くんも私と一緒に楽しんでくれているのが伝わってきて、ますます私を嬉しくさせてくれた。


お昼間近になって、水族館にあるカフェでランチを食べた後、私達はイルカショーとアシカショーを見た。


どちらのショーも初めての私にはすごく楽しくて、小さな子供達と同じくらいはしゃいで夢中で見ていた。
ショーが終わった後、他の家族連れやカップル達が立ち去って行く中、高揚した気持ちを持て余したままの私はしばらく立ち上がることができなかった。


ショーの間中、はしゃぎ過ぎたことが恥ずかしくて、私は隣に座る薫くんに照れ笑い向けた。
薫くんはそんな私に優しく笑い返してくれる。


「イルカもアシカも可愛かったね。でも喜んでる結花が一番可愛かったけど」


そう言って私の髪をくしゃっと撫でてくれるから、胸がキュンとして私は真っ赤な顔を俯かせた。


「結花はホント、可愛いね」


真っ赤な顔で照れる私の頭をポンポンと撫でて、薫くんが愛しそうな声で言ってくれる。


そんなことを言ってくれるのは薫くんだけ。
だけど私がそう言ってほしいのも薫くんだけ。


自分のドキドキと弾む鼓動と火照る頬を意識しながら私は薫くんをそっと見上げて、小さく笑いかけた。


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