僕のonly princess
今、私が感じている幸せな気持ちが薫くんに届くように。
薫くんのことが大好きだっていう私の気持ちが届くように。
「……結花、そういう顔するのは俺の前だけにして」
でも私の顔を見た薫くんは少し複雑な表情をして、ちょっぴり不機嫌そうな声でそう言った。
……私、そんなに変な顔してるのかな?
好きって気持ちを伝えたかっただけなのに、薫くんにこんな顔をさせるなんて。
少し悲しくなって上げた視線をまた俯かせようとした私の頬に薫くんの指先が伸びてきて、薫くんは私の目をじっと見つめた。
「勘違いしてるだろ。結花が思ったような意味じゃないよ」
私を見つめる薫くんの瞳がいつもよりずっと熱っぽく感じるのはどうして?
勘違いって……?
そう思って絡まったままの視線を外せない私に、薫くんは困ったような笑顔を浮かべた。
「さっきみたいな顔、他の男に見せたくない。それに……俺の抑えも利かなくなる」
「……え?」
困ったような笑顔なのに、私を見つめる薫くんの瞳の熱はそのままで。
小さく呟くと、薫くんは私の頬を大きな手で包んだまま、私との距離を縮めた。
「キス、していい?」
「――――!?」
薫くんの掠れる小さな声に私は目を見開く。
薫くんの私を見つめる瞳の熱とその声が私の体を一瞬で熱くする。
じっと私の答えを待つ薫くんの表情がとても真剣で、私を想ってくれている気持ちがその熱の篭った瞳から伝わってくる。
私は返事をする代わりに、震える瞼をゆっくりと閉じた。
そっと、優しく、温かくて柔らかいものが私の唇に触れる。
触れるだけの優しいキスは、切なくて。でも堪らなく幸せだった。
すっかり誰もいなくなったその場所で、薫くんは触れた時と同じようにそっと私から離れると、そのまま私の背中をギュッと抱き締めてくれた。
「あんな可愛い顔、絶対他の男に見せないでね」
抱き締められた耳元で囁かれる言葉に私は真っ赤になりながら、何度も頷いた。