僕のonly princess


「ホント、大丈夫」


もう一度精いっぱいの笑顔を向けると、薫くんは少しホッとした顔をして「なら、いい」と言って笑い返してくれた。


薫くんはいつもこうやって私から無理やり何かを聞き出そうとはしない。
私から伝えるのを待ってくれているのかもしれないとわかっていて、そんな薫くんに甘えている私はまだ彼に何も告げることができないでいる。


薫くんは本当の私を知っても、私のことを変わらず好きでいてくれる?


そんな不安が私から話す勇気を奪っている。


薫くんを信じていないわけではなくて、自分に自信がないんだ。
誰からも憧れの眼差しを向けられる薫くんに、私の事情を知った後、想い続けてもらえるほどの自信が私にはまだなかった。


「ね、今日の記念にお揃いのものでも買わない?」


「お揃いのもの?」


「そう」


優しい笑みを私に向けてそう言った薫くんは、繋いでいた手を引き寄せてショップの奥へと入って行った。


「コレとかどう?」


薫くんが手に取って私に見せてくれたのは、淡いピンク色をしたイルカのストラップだった。


飾られたポップによるとそのストラップは『ローズクォーツ』でできているらしい。
そのストラップを薫くんから受け取ると、とっても滑らかな手触りで、少しひんやりしていて。
淡いピンク色がとても可愛らしくて、とても綺麗だと思った。


「とっても可愛くて私は嬉しいけど、ピンク色で薫くんは気にしない?」


私が持つにはいいかもしれないけれど、男の子が持つには可愛すぎじゃないかな?と心配になって薫くんを見上げながら訊くと、薫くんはクスッと笑って首を振った。


「結花とお揃いなら気にならないよ。それに俺って意外とこういうのも似合うと思わない?」


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