僕のonly princess


自分の目線の高さで淡いピンクのイルカを揺らしながら、薫くんは冗談めかしながら口角を上げた。
その表情が何だかとても艶っぽく見えて、一瞬、ドキッとしてしまう。
だけど、確かに薫くんが持っていてもあんまり不自然に思えないから、かっこいい人は何を持っていても似合うってことだろう。


そう自己完結させて、私は薫くんに笑顔で頷き返した。


「うん、薫くんは何でもお似合いだよ。私も薫くんとのお揃いはとっても嬉しいから……薫くんがいいならこのイルカのストラップにしたいな」


「よし、決まり。じゃあ、二つ買ってくるね」


「え、自分の分は自分で買うよ!」


ご機嫌な様子でストラップを二つ手に取ってレジに向かう薫くんを慌てて追いかける。
水族館の入場チケットもランチも薫くんが出してくれているのに。
どちらも分も私からお金を受け取ってくれない薫くんにこれ以上、負担してもらうのはさすがに申し訳ない。


だけど薫くんはお構いなしにさっさとレジのお姉さんにストラップを手渡してお会計を済ませようとしているから、私は強引に一つ分のお金をお姉さんに手渡した。


「結花、これは俺が……」


「ダメ。一つは私が買うの。……私が買うのは薫くんの分で、薫くんが買ってくれるのは私の分。それでもダメ?」


「……、ダメ、じゃないよ」


一瞬、薫くんが目を丸くして言葉を飲み込んで、苦笑いしながら了解してくれた。
強引だった私に呆れてしまったのかもしれない。
でもどうしても薫くんにだけ負担させるんじゃなくて、二人で一緒に買いたかったの。
初めてのお揃いのものだから。


こんなことに拘る私は子供っぽ過ぎるかな?


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