僕のonly princess



駅前でそんな賑やかなやり取りを終えた私達は、今更ながらにお互いに自己紹介をして、薫くんの自宅へ向かった。


吾郎くんと忠くんは薫くんと同じ学校の同級生で、三人とも一年生の時から同じクラスの仲良しらしい。
薫くんのお家までの道すがら、二人が(主に忠くんが)学校での薫くんのことを私に色々と聞かせてくれた。
薫くんは嫌がりながらも、お友達二人の話すのを少し照れたような表情を見せていた。


二人から聞く私の知らない学校での薫くんのお話も、それを聞く照れた顔をした薫くんも私の心を甘く掴んでもっともっと薫くんを好きになる。


「薫もやっと好きな女の子ができて、幸せいっぱいってことだな」


吾郎くんがぽつりと言ったその一言が、とても嬉しかった。


駅からゆっくり歩いて15分くらいで到着した薫くんのお家を見た私は、びっくりして目が丸くなった。


大きな門のような玄関をくぐると、アプローチが長く続く先に大きくて立派な“お屋敷”が建っていた。


詳しくは知らないけれど、薫くんのお父さんはたくさんのホテルを経営する社長さんだと噂で聞いたことがある。
今までお家のことが話題になったことがなかったから気にしていなかったけれど、薫くんはとんでもなく大きなお家の御曹司だと今更ながらに、実感した。


「結花、こっちだよ」


あんまりに大きな“お屋敷”に圧倒されて、呆然としていた私を薫くんが振り返って声を掛けてくれる。


こんなに立派なお家に住む薫くんの彼女が私でいいのかな……と心の隅で思いながら、私は立ち止まって待っていてくれる薫くんの元へ駆け寄った。


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