僕のonly princess
お屋敷まで続くアプローチから離れて、その奥へと案内してくれる薫くんに手を引かれながら、私は無意識に湧き上がってくる緊張でドキドキと鼓動を速めていた。
今日は薫くんのご家族も皆さん一緒だと薫くんから聞いていた。
と言うことは、これから行く先にはそのご家族がいる。
薫くんのご家族だからきっと素敵な人達だと思うけれど、それでも私なんかがお邪魔してもよかったんだろうかと小さな不安が生まれていた。
「大丈夫だよ。みんな結花に会うのを楽しみにしてたんだ」
私の不安を繋いだ手から感じ取ってくれたのか、薫くんが私の耳元に小さく呟くように声を掛けてくれた。
優しいその声に顔を上げると、薫くんは私の目を見て微笑んでくれる。
それだけで心にじわりと温かな気持ちが広がって、小さな不安はどこかへ消えていった。
「にー!」
お屋敷の奥にある広い緑一面のお庭についた私達のところへ、大きな声を上げてパタパタと小さな女の子が駆け寄ってきた。
小さな両手をいっぱいに広げて、女の子は薫くんの足元にギュッと抱き着いた。
「理子ちゃん、ただいま」
足元に抱き着く女の子を軽々と抱き上げて、薫くんが笑顔で声を掛けると女の子はにこにこと大きな瞳を揺らして、嬉しそうに「キャッキャッ」と笑った。
この女の子が薫くんの姪っ子ちゃんの理子ちゃんなんだ。
薫くんから聞いていた通りの可愛くて、お人形みたいに愛らしい女の子だ。
薫くんのことがとっても大好きだとその笑顔を見ているだけで伝わってくる。
薫くんも最初は理子ちゃんとどう接していいか不安そうだったけれど、今ではしっかり溺愛しているのが、理子ちゃんに向ける笑顔でわかる。
何だかとても微笑ましい二人に、私も自然と頬が緩んで笑顔になっていた。