僕のonly princess
「もう食べ頃だけど、どうします?お義父さんを待ちますか?」
「いいえ、待たなくてもいいわ。せっかく食べ頃なんだから先に始めておきましょう」
「よっし、食うぞぉ!!」
コンロの前で焼き加減を確認していた理さんの言葉に薫くんのお母さんが笑顔で答えると、忠くんが待ちきれないとばかりに、声を上げた。
その気合の入った声にみんな、声を上げて笑った。
「結花ちゃん、このお皿をみんなに渡してくれるかしら?」
「はい、……おばさま」
手元に会った取り皿を私に手渡す薫くんのお母さんに頷きながら、私は一瞬、なんて呼べばいいのか迷ってしまった。
こんなに若々しい人を『おばさま』と呼んでいいのかと、思ったのだけど、おばさまは『お願いね』と笑顔を見せてくれた。
心の中でホッとして、私は手渡されたお皿をみんなに配った。
「肉、肉~!」
お皿を手にした忠くんが嬉々としてお肉に手を伸ばそうとしている隣で、薫くんが何気にピーマンの刺さった串を理さんから受け取ると、忠くんのお皿に乗せた。
「え……ちょっ、薫!なんでピーマンだよ!?」
「あれ?忠は今日、ピーマンオンリーじゃなかった?」
「なっ!アレは冗談だっただろ??」
「まさか。俺は本気だったけど?」
「薫~~~!!!」
また始まった子供みたいなやり取りに、私は自然と頬が緩んで笑ってしまう。
私の隣では私からお皿を受け取った吾郎くんが「バカだな」と呆れた顔をしている。
おばさまも佐知子さんも理さんも、みんな笑っていて。
よくわからないはずなのに、理子ちゃんもこの楽しい雰囲気に「キャッキャッ」とはしゃいでいる。
笑顔の溢れる楽しい時間に、心の中がとても温かくなって込み上げてくる嬉しさを溢れさせるように私は心から笑っていた。