僕のonly princess
おじさまの嬉しそうな笑顔は私を同じように嬉しくさせてくれたけれど、そのすぐ隣で目を細めるように私を見ていた本郷さんに、胸が苦しくなるのを感じて私は唇をグッと噛み締めた。
その後の私は自分でも最悪だと思うほど、ぎこちなかった。
せっかくの薫くんのご家族とお友達との楽しい時間なのに、その場に加わった本郷さんを意識してうまく笑えないし、あんなに美味しかったお肉の味もわからなくなった。
それでも誰も何も言わないし、聞かない。
きっと私の態度はあからさまで、この場にいたみんなに伝わっていただろう。
そんな私にみんなは何も聞かない代わりに、さっきまでと変わらず自然に接してくれた。
確実に雰囲気を壊しているのに、こんな私にも優しくしてくれるなんて。
有難くて、でもとても申し訳なくて。
それでもどうすることもできない私は、薫くんだけでなく、この場にいたみんなの優しさにまた甘えてしまった。
たくさんあった食材もすっかりみんなのお腹の中におさまって、理さんの指示に従ってお片づけを手伝った後、おばさまと佐知子さんが作ってくれたというシフォンケーキを頂いた。
テーブルの向こうでは、おじさまと本郷さん、それから理さんの三人で何かお仕事の話をしているようだった。
私はできるだけ本郷さんを視線に入れないようにしながら、芝生の上で理子ちゃんと遊んでいた。
理子ちゃんは薫くんから聞いていた通り、本当に可愛くて、人懐っこい性格なのか初対面の私ともにこにこ笑って遊んでくれる。
理子ちゃんのその笑顔に私の胸の痛みも和らいだ気がした。
「結花ちゃんは小さい子と遊ぶのに慣れているのね。理子が本当に楽しそうだわ」
「いえ、私の方が理子ちゃんに楽しませてもらっています」
佐知子さんがママの顔をして笑顔の理子ちゃんの頬を撫でるのを羨ましい気持ちで見つめながら、私は小さく首を振って答えた。