僕のonly princess
嬉しそうに声を上げて喜ぶ理子ちゃんを見ていると、思い出してしまうのはやっぱり母のこと。
薫くんのご家族は理さんを含めて、みんな仲が良くてとても幸せそうで素敵だ。
本当に……羨ましいと思った。
誰かの家族を羨ましいと思ったことは、今までもあるけれど、それでもないもの強請りはしてこなかったつもりだ。
だけど、こんなに素敵な温かい家族の中に一瞬でも加えてもらって、望んではいけないものを望みそうになる。
湧き上がってきそうなその気持ちに慌てて蓋をするように、私はグッと手を握り締めて深く息を吐き出した。
そろそろ陽も傾き始めた頃、吾郎くんと忠くんと私はお暇しようということになった。
「今日は本当にありがとうございました。ご馳走様でした。とっても美味しかったです」
「結花ちゃん、またぜひ遊びに来てね」
「私達も年末には正式に帰国するから、また理子とも遊んでやってね」
おばさまと佐知子さんに笑顔でそう言ってもらえて、私は笑顔で頷いてまたお邪魔する約束をした。
そんな私達を笑顔で見ていた薫くんと目が合って、二人でにっこりと笑い合った。
「それじゃあ、俺はみんなを送ってくるから」
薫くんがそう言って私の背中に手を回した。
「君達、もう帰るのかい?よかったら私の車に乗って行ったらどうかな?」
私達の後ろから本郷さんが話しかけてきて、私は思わずピクッと肩を震わせた。