僕のonly princess

本郷さんは吾郎くん、忠くんの順番で彼らを家まで送り届けた。
たぶん本郷さんの意図的に最後に残った私はとうとう二人きりになってしまった車内でずっと黙ったまま窓の外に目を向けていた。


「……結花…ちゃん」


そんな私を遠慮気味に呼ぶ本郷さんの声に、私は肩を震わせてゆっくりと振り返って運転席を見た。


「まさか江本さんのところで君に逢えるとは思わなかったよ」


取り繕うような笑顔を浮かべて、本郷さんは静かなトーンで私に話しかけてきた。
それに私は小さな声で「そうですね」と返すけれど、それ以上言葉を続けることができなくて、不自然に視線を逸らした。


「結花ちゃん……すまなかったね。君には望まない再会だったかな」


『私は君に逢えて嬉しかったけど』自嘲気味な笑みに変わった本郷さんが続けたその言葉に、私は何も返せずに俯くと、強く握った両手を見つめた。


本郷さんはそれ以上私に話しかけてくることはなく、気まずい沈黙が車内に広がっていた。


一秒でも早くふたば園についてほしいと私はただひたすら、窓の外を見ていた。