僕のonly princess


私が案内するまでもなく、本郷さんはふたば園に向かっている。
そう、本郷さんは私がここに住んでいることを知っているのだ。
どうして私がここに住むようになったのかも。
そして、私の母のことも………


「……ありがとう、ございました」


重たい空気に耐えかねた頃、本郷さんの車は迷うことなくふたば園に到着した。


車が停まったのを確認するとすぐ、私は本郷さんの車を降りてドアを閉める前に一言、小さくお礼を言った。


「結花ちゃんに逢えて嬉しかったよ。おやすみ」


「………おやすみなさい」


再び『嬉しかった』と言った本郷さんに私は振り向くこともせずに言葉だけを返して、車のドアを閉めた。


車内からまだ何か言いたげな顔をして私を見ていた本郷さんだけど、結局何も言わずに去って行った。
車の窓からちらっと見えた本郷さんの顔が悲しそうだったことに、私は胸が痛んだ。



………どうしてあの人が悲しそうな顔をしているのを見て、私は胸を痛めるの?



あの人のことを私はまだ認められないというのに―――――



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