僕のonly princess
「……え?園長先生、今……なんて?」
「こちらの本郷さんは結花ちゃんの血の繋がったお父さんなのよって言ったのよ」
「………お、父……さん?」
予想もしていなかった園長先生の言葉に、私は呆然とした。
「……結花ちゃん」
呆然とする私に目の前に座るその人は遠慮勝ちの声を掛けてきた。
彷徨わせていた視線をその人に向けると、園長先生が父だと言ったその人は私に微笑みかけた。
「突然のことで驚くのは当然だ。私は本郷圭吾と言います。いきなりで信じられないかもしれないが、私が君の父親だと言うことは紛れもない事実なんだ」
「どうしてそう言い切れるんですか?ママは……母は父のことについては何も話してくれませんでした。あなたが私を娘だという証拠はあるんですか?」
この時の私はなぜか目の前のその人、本郷さんの言葉がとても理不尽に聞こえた。
今まで一度だってその影さえ感じたことのない父親と言う存在。
母が生きている時も、亡くなった後もまったく音沙汰がなかったのに、なぜ今になって父親だと名乗り出てくるのかも理解できなかった。
「結花ちゃん、落ち着いて」
キツイ言い方をした私を宥めるように隣に座る園長先生が私の背中に手を当てて、静かに言った。
でも私の気持ちは落ち着けるはずもなく。
目の前の本郷さんを睨む視線を緩めることはできなかった。
「美雪……君のお母さんとは真剣に付き合っていたんだ。美雪が君を身ごもるその時まで」
「真剣に付き合っていたのに、妊娠した母をあなたは見捨てたんですか?」
「違う!」
本郷さんの大きな声に、ビクッと肩を震わせてしまった私を見て、本郷さんはハッとして悲しそうな目をして顔を歪めた。