僕のonly princess
「やっぱり美雪の実家ともまったく縁がないんだね。……美雪の実家は元はかなりの資産家だったんだが、美雪が高校を卒業してすぐにお父さんが事業に失敗してね……かなり大変な状況だった。でもそんなことは美雪とは何にも関係がない。私は美雪の実家がどうであれ、美雪と結婚するつもりだったんだ。しかし……美雪は私の前から消えてしまった。ずいぶん探したんだが、見つけることができなかった。これも最近わかったことだが、美雪は君を出産する間際まで海外に行っていたようだ。君を出産する間際に帰国して、たった一人で君を産んだ。そして一人で君を育てたんだ……どうして私は美雪と君を探し出せなかったのかと本当に後悔しているよ。本当に申し訳なかった。簡単に許してもらえるとは思っていないが、君には亡くなった美雪の分まで私が面倒を見たいと思って……」
「今更です!そんなこと……今更言われても私には受け入れられません」
本郷さんの話を黙って聞いていた私は、そこで大きな声を上げた。
母と本郷さんの間にあったことは頭ではなんとなく理解できたけれど、でもやっぱり納得なんてできなかった。
今更、父親だと言われても。
母とのことを聞かされても。
私はこの人を父親だなんて、思えない。
私には父はいないんだと、ずっとずっと思ってきたんだ。
今更、亡くなった母の代わりに面倒を見たいだなんて、そんな言葉に頷けるはずもなかった。
「結花ちゃん、落ち着いて」
園長先生がさっきと同じ言葉で私を宥める。
私は肩で息を吐きながら、湧き上がった怒りのような気持ちを吐き出すように息を吐いた。