僕のonly princess
「本郷さんと母の間のことも母の実家のことも私にはよくわかりません。私は生まれた時から父はいないものだと思って生きてきました。急にあなたが私の父だと言われても、私にはあなたのお世話になるつもりはありません。今まで通りここでお世話になって、自分で生きていきます。どうぞ私のことは気にしないで下さい」
私は気持ちを抑えて何とか落ち着いて、本郷さんを無表情で見つめながらそう拒絶の言葉を告げた。
本郷さんは私の言葉を聞いて、とても悲しそうに顔を歪ませて反論しようと口を開いたけれど、園長先生がそれをやんわりと制した。
「本郷さん、結花ちゃんはいきなり色んなことを聞かされて今は混乱しています。今日はひとまず、ここまでにしましょう」
本郷さんは何か言いたそうだったけれど、園長先生の言葉に小さく頷いた。
その後、園長先生から退出するように促されて、私は園長室を後にした。
「本郷さん、急いては駄目です。ゆっくり時間をかけて結花ちゃんと向き合って下さい。本郷さんが愛情を持って結花ちゃんと向き合っていけば、きっと結花ちゃんの心も開いてくるはずです」
私がいなくなった後、園長先生が本郷さんに話していたことも、それに悲痛な表情をしながらも決意を持って頷いた本郷さんのことも私は何も知らなかった。