僕のonly princess
ただ私は混乱していてどうしていいのか、本当にわからなかった。
本郷さんの話が本当なら、愛した人の子供を妊娠したのに、姿を消して一人で産み育てることを選んだそんな母の気持ちも私にはわからなかった。
私を身ごもらなければ、ママは本郷さんの前から消えたりしなかったの?
私ができたから、ママは愛する人の前から姿を消さなければならなかったの?
生まれてきた自分自身を否定するような疑問が私の中に渦巻いていた。
その後、本郷さんは定期的にふたば園を訪れるようになった。
園長先生に言われたように、私とちゃんと向き合おうとしていたのかもしれないけれど、私はそれを素直に受け入れることはできなかった。
本郷さんがふたば園に来るたびに、とても嫌な気持ちがして。
本郷さんが色々と私にかけてくれる言葉もすべて拒絶してしまっていた。
本郷さんはそれでも辛抱強く私と接してくれていた。
私が拒絶するたびに、一瞬だけ悲しそうな目をして、でもすぐに優しく笑いかけてくれた。
なのに私は本郷さんをどうしても父だと認めることができなかった。
何に対してそれほど頑なになっているのか、自分でもわからないけれど、父という存在を認めてしまえば、母と二人で過ごしていたあの時間が私の中から消えてしまうような気がして。
私のために懸命に働いていた母を裏切るような気がして、私は本郷さんを拒絶し続けている。