僕のonly princess


清稜に合格して、4月、初めて清稜の制服に袖を通した私を見た本郷さんは、切なそうな笑顔を浮かべていた。


「美雪の高校生の頃にそっくりだ」


と、そう言った本郷さんの目は赤かった。


けれど清稜に通い始めて、私は複雑な気持ちで過ごしていた。
母の母校がどんなところか知りたくて入学したけれど、周りの生徒達と自分の違いに戸惑ってばかりだった。


私はお嬢様ではない。
他の生徒達のように親がお金持ちでもなければ、彼女達のような生活を経験したこともない。
本郷さんという存在を拒絶している私には、親さえいないのだ。


本郷さんは高額な学費をポンと出せるほどの経済力のある人だとはわかっていた。
毎回ふたば園に来るときに乗ってくる黒塗りの高級車や見るからに高級そうなスーツ。
私や他の子達に時々持ってきてくれるお土産もその辺のお店では売っていないような高級なお菓子だったりもする。


本郷さんが初めて来た日の夜に園長先生から本郷さんがどういう人なのか、説明された話によると、本郷さんはかなり名の知れた企業の社長さんらしい。


それでも私にとってはまだ他人なのだ。


本郷さんが初めて来たあの日から二年が経とうとしているけれど、私はまだ本郷さんを父として受け入れることができないままだった。



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