僕のonly princess
転校生
薫くんのお家へお邪魔してから、数日後。
9月を迎えて、新学期が始まった。
結局、あの後、薫くんと会う機会がないままで。
話そうと決意したことも薫くんに話せていないままだ。
今日は薫くんも私も午前中で学校が終わるから、放課後、会う約束をしている。
今日こそは話をしようと改めて決意をして、私は学校へ向かった。
長い夏休みを終えて、クラスメート達はどこへ旅行へ行ったとか、どんなパーティーへ出席したとか、私には到底縁のない話で盛り上がっていた。
元々、学校で親しい友達のいない私はいつものように一人で席についてHRが始めるのを待っていた。
始業ベルが鳴って、先生が教室にやってきた。
その先生と一緒に見知らぬ女の子が入ってきて、教室は一瞬、ざわめいた。
「転校生を紹介するぞ。小林エミリさんだ。小林は家庭の事情で最近まで海外で生活していたから日本の学校には不慣れだ。みんな色々と教えてやってくれ」
担任の杉山先生が隣に立つ小林さんと呼んだ女の子に挨拶するように促すと、小林さんはにっこりと笑顔を浮かべて、明るい声で自己紹介を始めた。
「小林エミリです。父の海外赴任で先月までオーストラリアに住んでいました。慣れないことが多いと思いますが、よろしくお願いします」
戸惑いなどまったくないようなハキハキとした声でそう言って、ぺこりと頭を下げた小林さんは太陽のように明るく、とても美人な女の子だと私には思えた。
何だか私にはそんな彼女がとても眩しく見えた。