僕のonly princess


「小林はあの一番後ろの席に着きなさい」


そう言って先生が促したのは、私の後ろの席だった。
夏休み前には机はなく、空間だけ空いていた場所に今は誰も座っていない机と椅子があった。
教室に入って、どうしてここに新しく席ができているのかと思っていたが、小林さんが転校してくるからだったんだと、今更ながら気付いた鈍い私。


小林さんは私の後ろの席に座って、「よろしくね」ととても綺麗な笑顔を私に向けた。


私はそんな笑顔を同級生から向けられたことがないから、少し戸惑いを感じつつも笑顔を返しながら「こちらこそ」と返事をした。


HRが終わって、杉山先生がいなくなると、小林さんはトントンと私の肩を後ろから叩いた。


「あなたの名前、教えてくれる?」


にっこり笑ってそう訊かれて、私はやっぱり戸惑いながら答えた。


「鶴見結花です」


「結花ちゃん?結花ちゃんって可愛い名前ね。見た目もとっても可愛らしいし、ぴったり。結花って呼んでいい?」


「……え、はい……いいですけど」


「私のこともエミリって呼んでね?それからどうして敬語なの?同い年でしょ?お友達なんだし、普通に話して?」


「……は……うん」


私はエミリちゃんの初対面だということも全く気にしていない接し方と発言に、正直びっくりしていた。


出逢って数十分しか経っていない私を“友達”だと言う彼女にも、いきなり呼び捨てで呼ぶ彼女にも、それをごく自然にできてしまえる彼女にも……本当に驚いていた。


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