僕のonly princess


だけど、その反面、“友達”だと言われたことが嬉しくもあった。


この学校で私のことをそんな風に思う人はきっと誰もいない。
家庭環境のまるで違う私を他の人達はみんな、浮いた存在だと思っていたから。


エミリちゃんはその後も元々知り合いだったかのように私にアレコレ話しかけてくれた。
周りのクラスメート達は少し怪訝そうな顔をして、そんな私達を見ていたけれどエミリちゃんは気付いていないのか、それともそんな視線を気にする性格ではないのか、お構いなしに話を続けた。


最初は戸惑いを隠せなかった私だけど、いつの間にかエミリちゃんのペースにすっかり流されて、笑顔で彼女の話に相槌を打つようになっていた。


講堂で行われる始業式にも、講堂の場所がわからないエミリちゃんと当然一緒に向かった。


講堂からの帰り道、トイレの場所、よく使う移動教室の場所、図書館の場所……一通り、エミリちゃんに説明しながら教室に戻る頃には、私も自然とエミリちゃんとの会話を楽しいと思っていた。


学校でこんなに笑顔でいたことも、楽しいと思ったことも初めてだった。


エミリちゃんが私に言った“友達”という言葉を私も彼女に対して、自然に思えるようになっていた。


清稜でできた初めての友達。


海外での生活が長いらしい彼女だからなのか、明るくてハキハキとした性格のエミリちゃんは私とは全然違うタイプだけど、嫌な感じはしなかったし、寧ろ、私にはないものを持っている彼女に憧れにも似た気持ちを持ち始めていた。


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