僕のonly princess
いつもは一人で歩く道を今日はエミリちゃんと二人で歩いている。
歩きながら学校の話やエミリちゃんが留学していたオーストラリアの話をして笑い合う。
そんな当たり前かもしれない友達との時間。
でも私にはそれはこの学校へ入学してから一度もなかったことだったから、なんだかとても楽しくて、新鮮だった。
学校から駅までの時間がいつもよりずっと短いものに感じられた。
駅のいつもの売店の前。
まだ薫くんは来ていないみたいで、エミリちゃんとおしゃべりしながら薫くんを待った。
エミリちゃんとのおしゃべりに夢中になっていると、スマホの着信音が聞こえて、私は鞄からそれを取り出して確認した。
「彼氏から?」
「うん。電車もうすぐ着くみたい」
薫くんからのメールに私の心臓はやっぱりドキドキする。
薫くんに会えるのが嬉しくて、早く会いたくてエミリちゃんとおしゃべりを続けながら、私は薫くんが出てくる改札口を気にしていた。
「……あ」
メールをもらってから数分で改札口から現れた薫くんの姿を見つけて、思わず小さな声が出た。
久しぶりに見る制服姿の薫くんは、やっぱり今日もかっこいい。
私にも気付いて笑顔で手を振ってくれる薫くんに私も小さく手を振り返しながら、ドキドキが増して頬に熱が集まる。
「結花、あの男の子が彼氏くん?」
「うん。そうだよ」
「……へぇ…すっごくかっこいい人だね」
私のすぐ隣でエミリちゃんがこちらに早足で向かってくる薫くんをじっと見つめて、呟いたその声に違和感を覚えて私は思わずエミリちゃんを振り返った。
私は薫くんを見つめているエミリちゃんの表情を見て、ドキンと胸に嫌な痛みを感じた。
それはまるで、恋する人を見つめるような女の人の顔だったから。