僕のonly princess
出逢い
人で溢れかえる街中のカフェ。
俺を呼び出した目の前の子は、鋭い瞳で俺を睨みつけて感情を隠すように低く、声を発する。
「薫は私のこと好きじゃないんでしょ?」
疑問形で訊いているのに、本人の中では確信があるみたいだ。
とりあえず、「そんなことはないけど」と呟くように返事をしてみると、余計に油を注いでしまったのか、彼女の瞳に湧く怒りの色が濃くなった。
「礼美ちゃんは俺といても幸せになれないね」
フッと微かに漏れる笑みを口端に乗せて、目の前の彼女に静かな口調で呟くと、礼美ちゃんは怒りに任せるようにガタンッと大きく音を立てて椅子から立ち上がって、深く眉を寄せて顔を歪ませた。
「最低っ」
はっきり言い放った彼女は、そのまま怒りのまま足を踏み鳴らしてカフェを出て行った。
「……ふぅ」
俺は一人残された席で小さく息を吐いて、すっかり冷めてしまったラテを口に含んだ。
コーヒーに溶けたミルクの香りが体に染み込んで、少しだけ心がほっとした。