僕のonly princess
揺れ始める波
朝から雨の日曜日。
この辺りで一番大きなショッピングモールにあるシネコンで何を見ようかと、俺は隣に立つ結花ちゃんを見下ろしていた。
そう、今日は結花ちゃんと二人でデートだ。
先日の放課後デートを含めて2度目のデートに結花ちゃんはまだ慣れないのか、緊張した顔をしている。
ひざ丈の薄いベージュのシフォンワンピースを着た結花ちゃんは、制服を着ている時よりも更にふんわりとした印象で、肩の下まで伸びた黒髪を今日はハーフアップにしている。
露わになっている透き通るほどの白い頬や首筋が、ほんのりピンク色なのは緊張しているからなのか、照れているからなのか。
とりあえず、可愛らしさが数段増している。
俺の肩より下にある結花ちゃんの顔を覗き込めば、結花ちゃんはそれにも気付かないほど真剣にこれから見る映画を思案していた。
「何見たいか決まった?」
結花ちゃんの顔を覗き込む形のまま近づけた距離を保って、囁くように訊くと結花ちゃんは驚いたようにピクッと肩を揺らして、俺を振り返るとその大きな目を見開いた。
「え、江本くんっ」
俺との距離の近さにびっくりして、結花ちゃんは真っ赤な顔で一歩下がる。
結花ちゃんの動揺っぷりに吹き出しそうになりながら、グッと堪えてにっこりと笑って見せた。