僕のonly princess
「ごめんね、結花。待った?」
「う、ううん。大丈夫……」
私の目の前までやってきた薫くんがいつもの優しい笑顔で声をかけてくれたのに、私はエミリちゃんのことが気になってぎこちない笑顔しか返せなかった。
そんな私に薫くんが気付かないわけもなく。
首を傾げながら少し心配そうな瞳で私を見つめる。
「はじめまして!薫くんですよね?私、結花の友達の小林エミリです!!」
そんな私達の間に割って立つようにエミリちゃんが顔を出して、女の私が見てもドキッとするほどの綺麗な笑顔を薫くんに向けた。
「……結花の友達?」
薫くんはびっくりしたように目を丸くしてエミリちゃんを見ると、彼女の後ろになった私に戸惑った顔を見せた。
私の学校でのことを知る薫くんには、突然、友達と名乗ったエミリちゃんを不思議に思っているのだろう。
「…うん。エミリちゃんは転校生で、今日から同じクラスになったの。それで……」
「結花の後ろの席になったから、色々教えてもらってて。転校して初めての友達になってもらったの!」
元気にハキハキした口調で薫くんに話しかけるエミリちゃんの横顔は、とてもキラキラしていた。
薫くんは私とエミリちゃんの話から私達の関係を理解してくれたみたいで、戸惑っていた表情を崩すと、ふわりと優しい顔で私達に笑いかけた。
「そっか。結花の友達ってことは俺にとっても友達だね。江本薫です。よろしくね」
「うんっ!ぜひよろしく!!」
薫くんは純粋に学校に友達のいない私に、友達ができたことを喜んでくれているんだと思う。
笑顔でエミリちゃんに挨拶をする薫くんに、エミリちゃんはキラキラな笑顔をもっと輝かせて、薫くんの手を取ってギュッと握り締めた。