僕のonly princess
そんなことを色々考えている私に手を繋いでいた薫くんが優しい声で訊いてくれた。
「ホームまでなら一緒に行ってもいい?」
「え?」
「家まで送るのは無理でも、ホームで見送るくらいは許してくれる?」
「か、おるくん……」
少し寂しそうな顔で笑ってそう言った薫くんに私の心はぎゅっと掴まれたみたいに痛くなった。
薫くんにこんな顔をさせて、気を遣わせて……私って本当に最低だ。
「薫くん、私……薫くんに聞いてほしいことがあるの」
手を繋いでホームで一緒に電車を待ってくれている薫くんに、私は勇気を絞り出すように声を出した。
「別れ話以外なら何でも聞くよ」
静かな声でそう言った薫くんに私はブンブンと大きく首を左右に振る。
「別れ話なんて、私からするわけない!そうじゃなくて……」
「うん、わかってる。まぁ、万が一結花からそんな話されても俺は結花のことを離せないけどね。もう絶対に離さないって決めてるから」
スッと片方の口角を上げて、私を見つめて笑う薫くんにクラクラするくらい見惚れて、私はボンッと真っ赤な顔になった。
そんな私を優しく目を細めて見つめながら、『可愛い』と言って繋いでいない方の手で私の髪を撫でる薫くんにますます恥ずかしくなる。
「……私のこと……薫くんに言えていないことがあるの。それを薫くんに聞いてもらいたい。聞いた後で薫くんに軽蔑されちゃうかもしれないけど、それでも、私は……」
「俺が結花を軽蔑したり、嫌いになることは絶対にないよ。どんな結花でも大好きだってそれだけは自信を持って言えるから」
「……薫くん」
話した後のことを考えて、つい苦しくなって俯いた私に薫くんはギュッと手を握り締めて、はっきりとそう言ってくれた。
薫くんのその言葉はとても真剣で、真っ直ぐで。
嘘じゃないって私に伝えてくれる。
薫くんの強い気持ちが嬉しくて、私は涙が溢れそうになった。
「今度、ゆっくり時間を作ろう。週末にデートしようか?」
涙の滲む私の目元を親指でそっと撫でるように拭って、微笑みながら言ってくれた薫くんに私はコクリと頷いた。
こんなにも真っ直ぐに私を想ってくれている薫くんに、その時こそすべてを話そうと私は心に固く誓った。