僕のonly princess
でも、私の心に湧いてくる不安。
それはエミリちゃんの真剣な表情から私を不釣り合いだと言った別の理由があるように感じられるからだ。
エミリちゃんは何を知っていて、薫くんに何を伝えようとしているの?
私は恐怖にも似た不安に顔を歪ませて、エミリちゃんをただ見つめていた。
「薫くんは知っている?結花の家の事情」
「結花の家の事情?」
「―――――っ!」
“家の事情”と言ったエミリちゃんに私はやっぱりという思いで目を見開いて息を呑んだ。
「そう。結花はずっと養護施設で暮らしているって薫くんは知っていた?」
「……養護施設?」
薫くんはエミリちゃんから聞いた事実をよく理解できないと眉を顰めながら、反芻するように呟いた。
いきなりこんなことを言われて混乱しているんだろう。
私は唇を噛みしめて顔を俯かせた。
今日こそ本当に自分から告げるつもりだったことを予想もしない相手からいきなり告げられて、私は後悔と悲しさで胸が苦しくて堪らなくなった。
こんなことならもっと早く勇気を出して薫くんに話しておけばよかった。
他人に告げられてしまうくらいなら、薫くんの反応がどんなに怖くても自分の口から話しておくべきだったんだ。
私は噛み締めた唇をギュッと引き結んで、膝の上で両手を固く握り締めた。
その手は小さく震えていて、自分ではどうしようもない。
怖い……
薫くんがどう思ったか。しかも私からではなく他人から聞いたことが更に恐怖心を煽る。
隠し事をして話せなかった私が悪いのに、この期に及んで薫くんの続く反応が怖くて私は顔を上げることさえできない。