僕のonly princess
そんな私の固く握った手に隣からそっと大きな温かい手が重なった。
「………っ?」
思いがけないことにピクッと身体が震えた。
そんな私を宥めるように薫くんは重ねた手で私の手を包み込んだ。
「結花が養護施設で暮らしていることがどうして俺と不釣り合いだという話になるの?結花がどんな生活をしていてもそれと俺とのこととはまったく関係ないことだ」
薫くんは私の手をギュッと握りしめて、目の前のエミリちゃんを厳しい表情で見つめながらはっきりと言ってくれた。
「……ぅっ」
私は溢れてくる涙を抑えきれなくて、噛み締める唇に力を込めた。
「だって薫くんの家は有名ホテルをいくつも経営する大企業でしょ?薫くんは一人息子だって聞いたわ。将来は社長になる薫くんに素性もわからない養護施設で育った相手なんて不釣り合いだと思わないの?」
「……何それ。俺の家や会社のことはもっと俺達のこととは関係がないよ。将来社長になるなんて今はまったくわからないことだし、たとえそうだとしても社長になる俺と付き合うのに結花が不釣り合いだという意味がまったくわからない!」
さっきよりも大きな声で苛立ったような言い方をした薫くんにエミリちゃんは一瞬、たじろいだ。