僕のonly princess
「結花にどんな事情があっても、どんな生活をしていても俺と不釣り合いなんて思わない。元々不釣り合いなんて考え自体気に入らない。君は過去の俺のことは知ってるの?そんなこと言ったら、あんな酷いことしてた俺の方がずっと結花と不釣り合いだ。結花はそんな俺を闇から救ってくれた。それは結花にしかできなかったことだ。俺が結花だけを求めたから。俺は結花だから好きなんだ。これからも結花だけしか愛さないし、愛せない。だから君や他の女の子の気持ちには一切答えられない」
薫くんの真剣で強い想いの篭った言葉にエミリちゃんは息を呑んで言葉を失くしている。
私の頬を堪えきれなくなった涙がとめどなく伝う。
薫くんの言葉が嬉し過ぎて。
今まで薫くんの反応が怖くて話し出せなかった自分の弱さが許せないほど悔しくて。
私は声を殺して俯いたまま涙を流した。
「結花は君と友達になれて本当に嬉しかったんだよ。そんな友達を不本意でも俺が結花から奪うことになってすごく悲しいと思う」
「…ち、違う……」
さっきまでの厳しい口調から一転して、悲しそうに呟く薫くんに私は胸を鷲掴みにされて掠れる声で否定しながら何度も大きく首を左右に振った。
そんな私を慰めるように薫くんは重ねている手をもう一度、強く握り締めてくれた。
「………薫くんの気持ちはよくわかったわ。私……すごく馬鹿だったね。……ごめんなさい」
エミリちゃんは急にそれまでの強かった声が嘘のように、悲しそうな小さな声で呟くと静かに立ち上がった。
「もう二度と薫くんと結花の邪魔はしないわ」
そう告げてもう一度、『ごめんなさい』と言って、エミリちゃんは私達の前から立ち去った。