僕のonly princess
エミリちゃんがいなくなって、私達の間に沈黙が落ちる。
私は頬を伝っていた涙を手で拭って、意を決して顔を上げた。
薫くんの強い気持ちにちゃんと応えたい。
私自身からちゃんと薫くんにすべてを話して、薫くんに私を知ってもらいたい。
「薫くん……ずっと黙っていてごめんなさい。今更かもしれないけど、私のこと全部話すから聞いてくれる?」
まだ涙が滲んで視界が霞んでいるけれど、それでも私は真っ直ぐに薫くんを見つめて薫くんに懇願する気持ちで訊ねた。
薫くんも私の瞳をじっと見つめ返して、首を縦に振った。
重ねられた薫くんの手は離せれることなく、更に強く優しく私の手を包み込んでくれている。
それが薫くんの気持ちの表れのような気がして、私の背中を強く押してくれる。
私は一つ、大きく息を吸って薫くんにすべてを話し出した。
母子家庭だった小さい頃の母との暮らし。
母の事故と死。
身寄りのなくなった私の養護施設での暮らし。
勇也との関係。
そして、父と名乗り出てきた本郷さんのこと。
私は一つ残らず全部、薫くんに話した。
最後まで薫くんは私の手を握ったまま、黙ってその長い話を聞いてくれた。
私から視線を一度も逸らすことなく聞いてくれた薫くんに、私はずっと隠していたことを改めて後悔した。
薫くんは私が不安に思うような反応をする人じゃなかった。
本当に今更だけど、自分の弱さのせいで薫くんを信じられずにいた自分が嫌になった。