僕のonly princess
「……今までずっと隠していて本当にごめんなさい。薫くんにこのことを話した後、薫くんにどう思われるか……怖かったの。私が弱いせいで今まで薫くんに嫌な思いをさせてきた……本当にごめんなさい」
「結花は俺が結花の話を聞いて、君を嫌いになると思ったの?」
確かめるように訊く薫くんに私は大きく首を左右に振る。
「薫くんの気持ちを疑ったことはないわ。でも今まで誰に何を言われても気にしなかったのに、薫くんにどう思われるか不安で言い出せなくなって……全部弱い私のせい」
止まったはずの涙が溢れ出しそうになって、私はグッと目を瞑った。
その瞬間、ふわりと優しい腕に抱かれて私は薫くんの胸に抱き寄せられた。
「結花、話してくれてありがとう。今まで不思議に思っていたことがこれで全部わかったよ」
「……え?」
穏やかな薫くんの声に私は思わず顔を上げて薫くんを見上げた。
私を見下ろす薫くんはとても優しく私に微笑みかけていた。
「家まで送るのを嫌がっていたことも倉石くんのことも小さな子供の世話が上手な訳も……それから俺が結花を庇って肩を痛めた時に結花がどうしてあんなに苦しそうにしていたのかも全部わかった」
薫くんは隠していた私を責めることもせず、私を愛しそうに見つめてくれている。
そして私の話したことを全部理解してくれて、優しく抱き締めてくれている。
薫くんのそんな深い情愛に私は堪らず、また涙で頬を濡らした。
「お母さんのことがあったから、結花は俺が傷ついたと思ってあんなに苦しそうにしていたんだね」
優しく語りかけてくれる薫くんに私は言葉を紡ぐこともできずに頷くだけで精いっぱいだった。