僕のonly princess
そんな私の頬に伝う涙を優しい指先で拭いながら、薫くんは柔らかい表情で私を見つめている。
「でもね、あの時俺は結花を守れて嬉しかったんだよ。それ以前に結花を傷つけたことは今も後悔してるし、そんな自分が許せないけど、あの時、誰よりも大切な君を守ることができて嬉しかったんだ」
「……薫くん」
薫くんがそんな風に思っていてくれたなんて思いもよらなかった私は、嬉しくて胸が熱くなった。
「きっと結花のお母さんも結花を守れて嬉しかったと思うよ」
「……え?」
「大切な人を守ることは、とても幸せなことだと思う。亡くなってしまったことは本当に悲しいけど、お母さんも後悔はしていないはずだ。俺は命を懸けて誰よりも大切な君を守ってくれたお母さんに心からありがとうって言いたい。お母さんが結花を守ってくれたから俺は結花に出逢えたんだ。こんなに愛しいと思う君に出逢ってこうしてそばにいられる。これは本当に奇跡みたいなことだよね」
「…か…おるくん……あり、がとう」
私という存在を確かめるようなその広くて温かな腕に私をしっかりと抱き締めて、噛み締めるように薫くんが言ってくれた。
その言葉に私は溢れる涙を止めることができずに、抱き寄せられた胸に顔を埋めて想いを込めて薫くんの背中を抱き締め返した。