僕のonly princess
その日、私は初めて薫くんにふたば園まで送ってもらうことになった。
全部話して、もう断る理由もないし、その必要もない。
薫くんに手を繋いでもらっていつもは一人で帰る道を二人で歩く幸せを感じていた。
薫くんもずっと笑顔で私の隣を歩いてくれている。
こんな幸せな気持ちになるのなら、もっと早く薫くんに話しておけばよかった。
なんて、そんな都合のいいことまで思い浮かぶほど、私は幸せだった。
「薫くん、ここがふたば園だよ」
ふたば園の門の前に着いて薫くんを見上げると、薫くんはゆっくりと足を止めた。
「薫くん、送ってくれてありがとう」
「こちらこそ。送らせてくれてありがとう」
薫くんの返してくれた言葉が嬉しくて、私は薫くんを見つめて笑った。
薫くんも嬉しそうに笑い返してくれて、更に嬉しさが大きくなる。
「……なんだ、送ってもらってきたのか」
不意に後ろから声が聞こえて、振り返ると門の奥から顔を出す勇也がいた。
いつもの無表情な顔だけど、左の口角が少し上がっている。
きっとずっとグズグズしていた私がやっと薫くんに打ち明けたことを察したんだろう。
まあ、ここまで送って来てもらったんだから薫くんに打ち明けたことはバレバレか。