僕のonly princess


そして……俺はもう一人、結花にとって大きな存在のはずのあの人とのこともどうにかしてあげたいと思っていた。


本郷さん。


父の取引先の社長で、父を通して面識のあったあの人が結花の実の父親だったなんて、驚きだった。
ずっと独身を通してきたと聞いていた本郷さんの過去と結花との繋がり。
結花がうちで本郷さんと会った時に見せた不自然な態度や表情の原因がわかった。
俺に本郷さんの話をする結花は、とても複雑な顔をしていて、本郷さんに対する気持ちの整理ができていないのだと悟った。


いないとされてきた父親という存在。
その人と母親との関係。
自分の生い立ち。


今まで結花が抱えてきたものが大きすぎて、突然現れた父親にどうしていいのかわからないんだろう。


家族という当たり前の存在がいる俺には、それは想像でしかない。
結花の気持ちを全部くみ取れるわけではないかもしれないけれど、それでも結花が戸惑いの中に垣間見せた望むような瞳。


それはきっと結花も家族を、父親を本当は望んでいるんだと思う。


結花のおかげで、俺は姉という存在を取り戻せた。
家族はやっぱり大切な存在だと、改めて実感できた。


結花にもそれを実感してほしい。


結花にしかわからない複雑な思いはあるだろう。
俺が触れてはいけない父娘の間の問題もあるだろう。


だけどそれでも、手を伸ばせば今までは望めなかった父親がそこにいるんだ。


結花が迷っているなら、少し強引にでも俺が引っ張り上げてみせる。


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