僕のonly princess
そう決心した俺は、今夜あるパーティー会場にいた。
もっと小さい頃は父さんに連れられてこういう場所にも何度か来たことがある。
だけど中学に上がった頃からまったく興味がなくなって誘われても断っていた。
そんな俺が急に一緒に行くと言い出して、母さんの方が驚いていたけど、父さんは何も言わずに俺を連れてきてくれた。
当然父さんは俺の目的を知っているわけではない。
だけど何も言わずにこうして連れてきてくれた父さんは会場に着くと、挨拶をして回るために俺から離れていった。
一人になった俺は会場内をぐるっと見渡して、誰かと談笑している本郷さんを見つけた。
そう、今日の俺の目的は本郷さんだ。
本郷さんに会うために父さんにここに連れてきてもらった。
本郷さんが談笑していた人に会釈してその場を離れてのを見て、俺は本郷さんの元に近づいた。
「こんばんは、本郷さん」
「……薫くん。やぁ、こんばんは。珍しいね、君がこんな場所に来るなんて」
声を掛けた俺を見て本郷さんは驚きながらも笑顔で応えてくれた。
俺は敢えて真剣な顔のまま、本郷さんに「少しお時間を頂けませんか?」と告げた。
本郷さんも笑顔から真顔になって、一瞬、間を開けてから「わかった」と呟いて俺をバルコニーへ促した。
誰もいないバルコニーは会場内の喧騒など嘘のようで、静かなその場所は窓から漏れる明かりに薄暗く照らされている。
俺はその静けさを破るように、目の前にいる本郷さんに真っ直ぐに視線を向けて口を開いた。