僕のonly princess
「結花から全部聞きました」
そう一言だけ言った俺に、本郷さんも俺を真っ直ぐに見返しながら「そうか」と小さく呟いた。
その表情は硬い。
結花がどんなふうに話したのか。
たぶん否定的な話し方をしたんだろう。
そんな不安な色が本郷さんの表情には広がっていた。
だから俺はそれまで真剣に引き結んでいた口元を少しだけ緩めて、本郷さんに笑って見せた。
「結花は本郷さんのことを完全に否定しているわけではないと思いますよ」
「……え?」
微かに笑って言った俺の言葉の意図を計りかねるように本郷さんは眉を顰めた。
俺は微かな笑顔を浮かべたまま、その先を続けた。
「確かに結花は戸惑っています。あなたと結花のお母さんとのこと、自分の生い立ちのこと、それから急に現れた父親という存在に。どう接していいのか、どう理解したらいいのかわからない……そんな気持ちなんだと思います」
結花からすべてを聞いた時に感じた彼女の様子を思い浮かべながら、俺はゆっくりと言葉を続けた。
あの時の結花は悲しそうな顔をしていることが大半だったけど、それだけじゃなかった。
ちゃんとその奥に望んでいるものがある。
俺はそう感じたから、お節介だと言われてもこうして行動しているんだ。
「それでも結花は心の奥で父親である本郷さんを受け入れたいと思っていると思います」
俺の勝手な解釈ですが……そう続けた俺に本郷さんは切なそうな顔をして、小さく溜息を吐いた。