僕のonly princess


確かに不自然なその子のことは気になるけど、こういう時は見て見ぬ振りをする人が多い。
現に何人もの人が訝しそうな視線だけ向けて、その子の前を通り過ぎている。
俺も気にはなるけど、きっとそのまま前を通り過ぎてしまっていただろう。


だけど、結花ちゃんは当たり前のようにその子のところへ駆け寄って、蹲るその子の前にしゃがんで何か話しかけている。


ほんの1、2分、立ち止まって二人の様子を見ていた俺は、しゃがんだままチラッと俺を振り返った結花ちゃんの仕草に我に返って、早足で二人のもとへ向かった。


「どうしたの?」


冷静をよそってそう声をかけると、結花ちゃんは同じ姿勢のまま俺を見上げて少し眉を下げた。


「迷子になっちゃったみたい。一緒に来ていたお母さんと逸れちゃったんだって」


そう呟くように言った結花ちゃんはまるで迷子になったのが自分のことのように、切ない顔をしている。


なぜかその顔を見て、俺は胸が小さくキュッと痛んだ。


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