僕のonly princess
頷いた私を見て、薫くんは一際優しく微笑むとゆっくりと立ち上がって私の髪を撫でた。
「俺は外にいるから、二人でゆっくり話して」
「か、薫くんも一緒じゃないの?」
頭上から降ってくる薫くんの言葉に、私は思わず顔を上げて訊き返した。
目が合った薫くんを縋るように見つめると、薫くんは優しい表情で首を左右に振った。
「これは父娘(おやこ)の話だから……」
「薫くんも一緒にいて。お願い!」
父娘の話だからと言って出て行こうとする薫くんの腕を掴んで引き留める。
薫くんは目を丸くしてそんな私を見下ろしていた。
それでも私が引き下がらないと察して、薫くんはテーブルを挟んだ向こう側に座っている本郷さんに視線を向けた。
「薫くんがよければ、一緒に聞いてくれていい。薫くんに聞かれて拙いことは何もないし、結花ちゃんもその方が安心していられるだろう」
薫くんから是非の視線を向けられた本郷さんは、静かな口調で薫くんの視線に答えた。
薫くんはもう一度、私を見下ろす。
私がそんな薫くんを縋るような思いで見つめ返すと、薫くんは私の髪をひと撫でして優しく口角を上げた。
「わかったよ。俺は結花の隣にいるから」
薫くんはそう言うと、私と並んでソファーに座ってくれた。