僕のonly princess


薫くんが私の隣に座ると、本郷さんはふぅーっと長く息を吐き出して、真っ直ぐに私を見た。


「……まずはどこから話そうか。私と……美雪のことから聞いてくれるかな?」


そう言って、静かに話し出した本郷さんはママと真剣に付き合っていたこと、ママの実家のこと、本郷さんのお家のこと、本郷さんのお父さんから勧められたお見合いのこと、そしてママがいなくなった後のことをゆっくりと言葉を選びながら話してくれた。


以前、ふたば園で聞いた話もその中には含まれていたけれど、私が理解しやすいようにもっと詳しく話してくれた。


真剣に話をしてくれる本郷さんの話を私も薫くんも黙ったまま聞いていた。


小さく震えながら聞く私に気付いた薫くんは『大丈夫』と言うようにずっと私の手を握り締めてくれていて。
そのおかげで私は最後まで本郷さんの話を聞くことができた。


「私は……どうして美雪を見つけられなかったのか、今でも悔しくて堪らない。美雪を探して1年くらいたった頃、美雪の友人に美雪は結婚したと聞かされてね。美雪はその人と新しい人生を歩んでいるからもう邪魔しないでほしいと頼まれたんだ。それを私は信じてしまった。美雪が幸せに新しい人生を歩んでいるなら仕方ないと……」


苦しそうに顔を歪ませて言葉を繋ぐ本郷さんに、私は胸が痛くなった。


ママが本郷さんとは別の人と……なんて嘘をどうして?


ママはずっと一人で写真の中の本郷さんを想っていた。
女手一つで私を苦労しながら育ててくれていた。
なのに、どうして……


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