僕のonly princess


「ママは別の人となんてっ……」


「わかっているよ」


思わず声を上げた私に本郷さんは苦痛に歪めた顔で痛々しく私に微笑んだ。


「今から2年ほど前、その美雪の友人だった人が私のところへ突然訪ねてきてすべてを話してくれたんだ。美雪が私の前から消えた理由も君の存在も……そして、美雪が亡くなったことも」


その時の感情が甦ったのか、本郷さんはより一層、苦しげに眉を寄せた。
それを吐き出すように深く息を吐いた。


「美雪は私が彼女を探そうとしていることを知って、そんな嘘を友人に伝えさせたんだ。私が諦めるように……私が別の人生を歩めるように」


本郷さんは膝の上に乗せた両手を白くなるほどギュッと握りしめて絞り出すように言った。


悲痛に歪ませている本郷さんの頬に一筋、涙が流れた。


私は黙ってそんな彼を見つめていた。


この人の中にあるのは悲しみと後悔。
そして、今でもその心の中にはママへの愛が確かにある。


目の前で亡き愛しい人を想って涙を流すこの人を見て、私の中にあった蟠りや疑いのような苦い塊が消えていく気がした。


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