僕のonly princess
「……すまない。悪いのは私なのに。美雪が離れて行かなくてもいいようにもっと私がしっかり彼女を守っていれば結花ちゃんにも寂しい思いも悲しい思いもさせずに済んだんだ。本当にすまない」
頬を伝っていた涙を掌で拭って、本郷さんは私に向かって頭を下げた。
私は立ち上がってそんな本郷さんのそばへ近づくと、彼の足元に膝をついて強く握り締められている手に自分の手を重ねた。
「結花ちゃん?」
驚いて顔を上げた本郷さんと視線を合わせて、私はゆっくりと首を左右に振った。
「私の方こそごめんなさい。本郷さんのことを今までたくさん傷つけましたよね。せっかく会いに来てくれたのに。私のために色々してくれたのに。……今までいないと思っていたお父さんが突然現れて戸惑いました。それにどうして愛し合っていたはずの二人が別れなきゃいけなかったのか、私にはわからなくて。ママの気持ちも、本郷さん自身のことも疑ってしまっていました。私が生まれなければ二人は別れることはなかったんじゃないかと思ったら……どうしていいのかわからなくなって」
「結花ちゃんが生まれなければよかったなんて、そんなことは絶対にないよ!美雪は君を本当に大切に想っていたはずだ。私と離れても君を産み育てていく覚悟があったんだ。君という命を何よりも大切だと思っていた証拠だ。それに私も君という存在を知って、心の底から嬉しかったんだ。誰よりも本気で愛した人が産んでくれた私の子供……本当に嬉しかったんだ」
私の告白に本郷さんは慌てたように声を上げて、とても真剣な顔で必死に伝えてくれた。
その言葉は蟠りの消えたばかりの私の心にずしりと響いて、涙となって私から溢れた。